東日本大震災の時の経験
システムが背負った責任と期待に応える。

これまでの経歴を教えて下さい。

入社して20年目になりますが、そのうち13年間は医薬系メーカー様の物流システムを担当していました。2年前に大きく変わり、お客様(飲料系メーカー様)の側に、全社のIT戦略企画を担当するマネージャーとして、2年間出向しました。このほどNSTに帰任しましたが、現在も引き続きお客様の立場で、同社全体のプロジェクトに参画し、お客様内各部と連携しながら、新システムの導入支援を担当しています。

ご自分の経歴の中で、一番印象に残っている仕事は何ですか。

東日本大震災の時の経験です。あの時私は、医薬系メーカー様の販売物流システムのリーダーをやっていました。納品先の病院や医薬品の卸店、お客様の福島工場は被災し、受注出荷業務は大混乱していました。出荷指示が出ても出荷が出来る状況ではありませんでした。被災地に何よりも必要なのは医薬品で、患者様に医薬品を届けることができるかどうかは、命の問題となります。例えば、透析患者の方のための透析液を、届けなければならないすべての病院に、限られた医薬品を過不足なく、絶えることなく、届け続けることが、社会に対して背負った使命となります。私はお客様の本社の物流担当、営業担当、システム担当等が集まった作戦会議に呼ばれ、納品可能な施設が日々変わる中、医薬品を供給し続けるための対応策を話し合い、朝から晩までお客様とともに在庫管理や出荷業務のシステム対応をしました。平時には各々の業務を行うメンバーが、あらゆる垣根を越えて一致団結し、来る日も来る日も、「明日、出荷する」ことを目標に力を尽くしました。この非常時対応は4月末まで続きました。システムが社会に対して背負った責任に応える、期待に応えることとは何かを感じた、一番印象に残った仕事でした。

テストを万全にやる。「大丈夫」と自分を落ち着かせる。

ご自分にとって、この仕事での「達成感」とは何ですか。

長く医薬系メーカー様の物流システムを担当してきましたので、そこでのお話をします。
システムの本番切替直前直後などは、とてつもない緊張感と責任の重圧に襲われます。物流は会社にとって生命線で、物流を管理するシステムに障害が起きると、倉庫業務が停止し納期遅延につながります。そして命に関わる医薬業界では、GMP*やCSV*などの厳しい品質基準があり、それをクリアすることが業務に使用するシステムの前提となります。要件定義から設計、開発、テストといった各フェーズについて品質基準をクリアし、商品の在庫移動と合わせ、システムやデータの移行作業についての万全な計画を立て、これらを実施するのは大変なプレッシャーのかかる仕事となりますが、本番化して無事トラックが商品を積んで出発し、きちんと納品先に届いたという知らせとお客様から感謝の言葉を頂いた時には、「大変だったが頑張ってよかった」とこれまでの苦労を忘れ、「達成感」というよりは「安堵感」に浸れる瞬間となります。

*GMP:Good Manufacturing Practice
*CSV:コンピュータ化システムバリデーション

そこで、こだわってきたことは何ですか。

とにかく「テストを万全にやる」ことです。物流は時間が命で動かすものを動かさないといけない。経験からその怖さを知っています。物が届かない、トラックが出発できない怖さ。お届けする商品の先は、患者様の命と繋がっています。命を背負っています。システムが切り替わる時は、注文がとれたか、データが流れたか、不備はないか、本当に怖いです。本番切替前は、中身をすべて自分で確認しないと落ち着きません。中身を何回も見て、「大丈夫」と自分を落ち着かせます。会社の上の方から、「テストをものすごくやっているが、そこまでやらなくても」といった意味のことを言われたことがありますが、悔いのないよう、万全に万全を期します。なので、無事動いたときは、動いて当たり前ですので、「達成感」というより、責任を果たせて良かったという「安堵感」となります。

システムと業務の関係性と影響度が見えると打つべき施策が見える。

お客様側に出向し、会社全体を俯瞰して見る立場となり、見えてきたことについて、教えて下さい。

出向先では仕事を発注する側となり、発注に至るまでの企画、経営への提案、予算策定、稟議等の対応を担当していました。これまでは物流という特定の領域に携わっていましたが、工場、営業、品質保証、財務、経理、人事から経営企画まですべてのシステムを担当させて頂くことになりました。発注側の立場、全体を担当する立場となったことで、2つ見えてきたことがありました。1つはお客様の目線です。例えば、新しいシステム導入する際、最も重要なことは、何のためにやるのかという目的をはっきりさせ、共有するということだと強く意識できるようになりました。

目的を果たすために、効果を具体的に整理し、投資する金額は見合っているのかを検証しますが、社内には様々な立場があり、それぞれで求めることが違う場合がありますので、全社にとっての導入の目的をぶれないようにきちんと固めておく必要があります。もう1つは、会社全体から各システム、業務の関係性を見ることの重要性です。担当させて頂いた領域が広いので、全体を俯瞰するくせがつきました。会社のどこでどんなシステムを使っているのか、データがどのようにつながっているのかを見るようになり、データの流れを追いながら業務の繋がりが見えるようになりました。そして、業務の繋がりが見えるようになると、会社全体の中でシステムの影響度と業務の影響度のどちらも見えるようになり、どんな施策を打てば良いかわかるようになりました。今後は、NSTの社員のお客様への理解をもっと高めていくために、自分が出向で培ったこのお客様の目線を社内に広げ、NSTのひとりひとりが真のビジネスパートナーとしてお客様からもっと信頼されるよう、会社を少しずつ変えていきたいです。

最後に、学生のみなさんに、この仕事の面白さを教えて下さい。

世界地図を広げ、どこにどんな国があって、そこにどんな人がいて、どんな生活をしているかを調べるのと同じで、ひとつの会社の情報システム全体を俯瞰してみると、販売計画を立て、商品を製造・販売し、代金を回収しというように、会社全体のデータの流れが見えます。少し掘り下げていくと、このシステムは営業が使っている、これは経理と利用部門が見え、実際に業務をされているお客様と話すと業務の中身が徐々に見えてきます。新しいIT技術を勉強する一方で、お客様の業務を学んでいくのは大変なことですが、やりがいを感じます。NSTでお客様のITを担う醍醐味かと思います。

ある1日のスケジュール

  • 8:45
    出社、メールチェック
  • 9:00
    部内管理職会議
  • 10:30
    お客様と電話、メンバーへ作業指示
  • 11:30
    客先へ移動、昼食
  • 13:30
    お客様との会議
  • 15:00
    提案書確認、資料作成
  • 17:00
    メールチェック、お客様と情報交換
  • 17:30
    退社(客先から直帰)

キャリアステップ

  • 1999年
    入社後、味の素グループ会社の物流システムを中心に開発、保守・運用を担当
  • 2003年
    医薬物流システム担当として設計・開発~保守・運用を担当
  • 2005年
    リーダーとなり医薬物流システムの再構築プロジェクトに参画プロジェクト完了後は、保守・運用を担当
  • 2016年
    管理職に昇格。味の素ゼネラルフーヅ㈱(現味の素AGF)情報システム部業務推進グループに出向。専任課長としてIT企画戦略を担当。様々な業務システムの企画・開発・運用を担当
  • 現在
    2年間出向を終え、NSTに復職。アプリケーションシステム事業部門で大規模プロジェクトに参画復職後も味の素AGF社の立場で全体のプロジェクトに参画し、お客様の各部門と連携しながら新システムの導入支援を担当

所属部署名、役職、内容等は取材当時のものです。

社員紹介